「給与計算・在庫管理をシステム化して残業をなくしたい」
「IT導入補助金はホームページ制作に使えないって本当?」
「インバウンドのお客が増えているのでセルフオーダーのシステムを導入したい」
「在宅ワークのためのコミュニケーション・システムを導入したい」

リソースの少ない中小企業の経営者、また個人事業主にとって、業務のシステム化、可視化は避けて通れない課題です。

しかし、中小企業や個人事業主の規模にちょうどよいITツールは意外に品ぞろえが少なく、コスパも悪くなりがち。

その中で、すべての中小企業経営者や、個人事業主がおさえておくべき資金調達方法は「IT導入補助金」です。

この記事はIT導入補助金の制度概要、事業者の選び方、申請の際の重要ポイントまで説明します。

この記事を読んで、感染症拡大などの非常事態にも負けない次世代型の会社にしてしまいましょう。

2020年3月に感染症対応で臨時募集された、令和元年度(2019年度)補正予算分の内容を反映しています。

中小企業が使える鉄板資金調達方法である補助金・助成金・融資について完全解説した記事です。

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1.IT導入補助金とは

2020年(令和元年度補正予算)IT導入補助金は、中小企業が今後直面する働き方改革、インボイスの導入等に対応するため、ITツールを導入する事業経費の一部を中小企業庁が補助するものです。

IT導入補助金の主な特徴は下記の4つです。

  • 幅広いカテゴリーのITツールの導入が対象
  • ITツールベンダーと一体になって申請する
  • 補助金額の大きさ
  • テレワーク(在宅ワーク・リモートワーク)導入を支援

業務プロセスや、バックオフィス業務を中心としたIT化を促進するために大いに利用できます。

IT導入補助金の概要について、以下のポイントに分けて説明します。

  1. IT導入補助金の対象者
  2. IT導入補助金の対象となる事業
  3. IT導入補助金の対象となる経費
  4. IT導入補助金の補助率・最大補助金額
  5. IT導入補助金の公募期間・採択日・事業実施期間
  6. IT導入補助金事業で頼りになるパートナー

IT導入補助金の制度概要について、それぞれを掘り下げて説明します。

IT導入補助金の対象者

IT導入補助金を受けられる事業者の要件は、各業種において、資本金の額、または常時使用する従業員の数が以下の表にかなう中小企業・個人事業主です。

申請プロセスは、「申請マイページ」というウェブページを通してオンラインで申請します。(gBizIDプライムを取得して、Jグランツのシステムで申請する形です。)

中小企業であれば、幅広い業種が対象となるのがIT導入補助金の魅力です。

業種分類  資本金の額 常時使用する従業員の数
製造業、建設業、運輸業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工場用ベルト製造業を除く) 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5千万円以下 200人以下
その他サービス業 5千万円以下 100人以下
その他の業種(上記以外) 3億円以下 300人以下
医療法人、社会福祉法人 300人以下
学校法人 300人以下

IT導入補助金の対象となる事業

IT導入補助金の対象となる事業は、あなたの会社でまだシステム化が不十分な業務分野にITツールを導入する事業で、以下の3つの条件にかなっている必要があります。

  1. IT導入支援事業者と相談して決定した
  2. 必要なプロセス数を満たす
  3. 生産性を向上させる

それぞれの条件について説明します。

#1.IT導入支援事業者と相談して決定した

事務局にあらかじめ登録されたIT業者(IT導入支援事業者)と相談して、必要なITツールを決定します。

IT導入支援事業者が事務局に登録しているITツールのなかで、現在会社が抱えている課題を解決する方法を探します。

#2.必要なプロセス数を満たす

ITツールは以下の3種類の分野(パッケージ)に分類されており、「業務」パッケージの1-8から1個以上のプロセス、表全体から2個以上のプロセスを解決するツールを選択しなければなりません。

登録されているそれぞれのITツールごとに、解決できる課題(プロセス)が1つ以上決められており、申請の際は複数ツールを組み合わせて課題を解決する道筋を設計します。

もちろん、「業務」パッケージの1-8から2個のプロセスを選んでも大丈夫です。

パッケージ プロセス
業務
  1. 顧客対応・販売支援
  2. 決済・債権債務・資金回収管理
  3. 調達・供給・在庫・物流
  4. 人材配置
  5. 業務固有プロセス(実行系)
  6. 業務固有プロセス(支援系)
  7. 会計・財務・資産・経営
  8. 総務・人事・給与・労務
効率化 自動化・分析
汎用 汎用
汎用とは、広い業務に適用できる独立したパッケージ。
グループウェア、文書管理、Saasのライブラリーなどが該当。

#3.生産性を向上させる

ITツールを導入して会社の抱える課題を解決することによって、労働生産性を向上させる効果が見込まれなければなりません。

具体的には、生産性の1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上を目標とした計画を作成することが求められます。

これは、2019年まで(1年後1.2%、3年後2%)と比較すると、かなりハードルの高い数値目標です。

効率が上がって、残業が減って経費節減できた、でもいいですし、従業員一人あたりの売上が上がったでもよいですが、どちらかと言うと、以下の2ケースのように、効率があがって労働生産性を引き上げた、というストーリーが好まれる傾向があります。

ケース1 卸売業、小売業など

問題
今までは受発注管理、在庫管理、売上管理を個別のExcelシートで管理していたので残業が定常的に発生し、ミスによる売上の機会損失が発生していた

IT導入事業
定型業務の自動化ツール(RPA)を導入することで、すべてを連携させて自動化

効果
各管理帳簿間での転記、転記ミスの修正がなくなり、チェック時間に要する業務時間が削減し、機会損失がなくなった

ケース2 介護、保育、警備、工場など

問題
今まではシフト間の情報共有、連絡を手書き書類で管理していたため残業が発生していた

IT導入事業
情報共有・連絡ツールを導入する事業

効果
書類作成・提出までの時間が短縮して残業がなくなった

IT導入補助金の対象となる経費

IT導入補助金の対象となる経費は、業務生産性向上に寄与する前述の対象事業のソフトウエア、それに付随するオプション、役務(サービス)の費用です。

補助対象となるオプション製品とは下記です。

  • 機能拡張
  • データ連携ツール
  • セキュリティ
  • ホームページ関連費(ただし、一方通行の情報発信しかできないホームページは対象外)

また役務(サービス)には下記が含まれます。

  • 導入コンサルティング
  • 導入設定・マニュアル作成・導入研修
  • 保守サポート

IT導入補助金の対象となるITツールは、IT導入支援事業者一覧で公開されます。

また、ハードウエア、リース料金、消費税は対象外ですのでご注意ください。

#1.ホームページ制作は補助対象になるのか?

過去にはどんなタイプのホームページ制作でも補助金対象となりましたが、現在は方針が変わり、双方向の情報発信機能を持つホームページのみが補助金の対象です。

例えば店舗の空き状況を確認して、予約や見積り依頼を行う機能があるホームページであれば補助金の対象となります。

もし簡易なホームページを制作する場合は、他の補助金の方が適している場合があります。

小規模事業者持続化補助金については、以下の記事で詳しく説明しています。

また、ホームページを活用した集客の具体的な方法について参考になります。

IT導入補助金の補助率と最大補助金額

IT導入に関して生じた前述の経費に関して2分の1の補助率で補助されます。

ただし、上限額、および下限額については、補助事業の内容によってA類型とB類型に分けられます。

A類型は、比較的申請のハードルは低く、補助額も比較的小さいのが特徴です。

B類型は、申請のハードルが少し高いが、補助額も大きいのが魅力になります。

補助額 A類型 B類型
上限 150万円未満 450万円
下限 30万円 150万円

ここ数年、下限額がどんどん上昇していたIT導入補助金ですが、今回は下限額が40万円(2019年)から下がりました。

昨年までは最低80万円の事業を行って初めて補助金申請できましたが、今回は60万円のITツールを導入すれば申請可能ですので申請のハードルが下がったと言えます

IT導入補助金の公募期間、採択日、事業実施期間

IT導入補助金公式サイトのスケジュールをご確認ください。

IT導入補助金事業で頼りになるパートナー

IT導入補助金の申請を行いたい中小企業は、登録されたITツールベンダーである「IT導入支援事業者」とパートナーになって申請します。

IT導入支援事業者は、適切なITツールの提案・導入・アフターサポートをしてくれます。

また、事務局からの指示、指導に関しても、中立ちとなって対応、サポートしてくれる心強い存在です。

IT導入支援事業者によって登録されているITツールを選択することによって交付申請が行われます。

2.IT導入補助金の採択率を上げる重要7ポイント

IT導入補助金の申請プロセスは、IT導入支援事業者一覧で実現したい課題解決、または導入したいITツールについて問い合わせ・相談をするところから始まります

公庫や金融機関の融資の際のように、面談で経営者の熱意を示して資金調達を目指すという戦略を採れません。

確実にIT導入補助金を獲得するために、以下の7ポイントを知っておくと助けになるでしょう。

  1. テレワークに取り組んでいると加点
  2. クラウドツールの導入は加点
  3. 地域経済牽引事業計画の承認・地域未来牽引企業の選定を受けていると加点
  4. 先端設備等導入計画で固定資産税の特例がある自治体では加点
  5. ルーキー優遇
  6. IT導入支援事業者選びは重要
  7. 経営課題と導入するITツールの明確なマッチング

それぞれのポイントを説明します。

テレワークに取り組んでいると加点

ニューノーマル(新しい生活様式)の対策として、在宅勤務(テレワーク・リモートワーク)を導入することを宣言し、実際の取組みへの姿勢をアピールすることは、今回のIT導入補助金採択率アップへの大きな前進です。

クラウドツールの導入は加点と合わせて、企業として柔軟な働き方を重視していることを示し、従業員を大事にしながら、競争力のある企業であることを示しましょう。

例えば、経理を効率化する会計ソフトや従業員間のコミュニケーション・システムの導入事業によって、リモートワークを可能にする事業であれば採択される確率はぐんと上がるでしょう。

クラウドツールの導入は加点

IT導入補助金の申請時に、「クラウド製品」としてITツール登録されたソフトウエアの導入を選択すると加点されます。

自社の課題をよく検討して、クラウドタイプのITツールで解決可能かどうか、IT導入支援事業者とよく相談しましょう。

クラウドツールの導入によって、テレワークも可能になるというストーリーを描ければ、ますます加点されます。

地域経済牽引事業計画の承認・地域未来牽引企業の選定を受けていると加点

経済産業省・都道府県が、地域の特性を生かして、地域に経済的効果を及ぼす企業として以下に承認・選定されている場合は、IT導入補助金の審査時に加点されます。

「地域経済牽引事業計画」は、経済産業省HPの企業事例にあるように、医療系、製造系、農業系、食品系、倉庫系など幅広い分野の事業者が認定されています。

基本的に通年で承認を得るための申請ができますので、詳細は経済産業省の地域未来投資促進法のページを確認するか、格闘道府県の担当部署に確認してください。

「地域未来牽引企業」の企業事例では、製造業を中心に、医療系・小売り・福祉系の事業者が選定されており、こちらは都道府県によって推薦されなければなりません。

先端設備等導入計画で固定資産税の特例がある自治体では加点

中小企業庁の生産性向上特別措置法による支援で、先端設備等導入計画で固定資産税の特例がある自治体に属していれば、自社で先端設備等導入がなくても審査時に加点されます。

IT導入補助金はソフトウェア導入に関する補助金なので固定資産とは無関係ですが、もし事業者がある自治体が先端設備等導入計画で固定資産税の特例があれば優遇されます。

先端設備等導入に伴う固定資産税ゼロの措置を実現した市区町村を確認してください。

なお、上記市区町村リストに載せられていなくても対象となる場合もあるので、事業所のある市区町村に問い合わせてみましょう。

ルーキー優遇

過去3年間に、IT導入支援関連の補助金をすでに受けた経歴のある事業者は今回のIT導入補助金の審査では減点となります。

ただし、申請できないわけではなく、あくまで減点となるだけです。

IT導入支援事業者選びは重要

IT導入補助金の申請は、IT導入支援事業者と呼ばれるITツールベンダーと「パートナー」になって申請します。

のパートナー選びはたいへん重要です。

その中で、IT導入補助金を無事獲得するには、下記のようなIT導入支援事業者をパートナーに選ぶことが重要です。

  • 幅広いITツールを提供できる
  • 過去のIT導入補助金の活用実績が多い
  • 事務局との間でじょうずに中立ちをしてくれる

経営課題と導入するITツールの明確なマッチング

会社が抱える経営課題を解決してくれるITツールの導入を申請することが重要です。

IT導入補助金のホームページには「経営診断ツール」と呼ばれるツールがあります。

IT導入補助金を申請する場合は、経営診断ツールを使って、自社の経営課題を分析しなければなりません。

この経営診断ツールによって導かれた経営課題と、導入を申請するITツールが明確にマッチングしている必要があります。

おもてなし認証の取得 2020年公式発表では優遇なし

2020年公募要領では加点ポイントに含まれていません

経済産業省が推進する「おもてなし規格認証」を取得していると、IT導入補助金の審査時に加点されるので大きく有利です。

おもてなし規格認証とは、日本全体のサービス産業の底上げをはかるために、高品質なサービスに対して、それにふさわしい評価が受けられるための規格認証制度です。

おもてなし規格認証について詳しくはこちらを参照してください。

3.IT導入補助金と他の補助金の比較

中小企業を対象にして、IT機器・システム導入や、ホームページ制作のためによく利用されている補助金としてはIT導入補助金以外に以下があります

  1. 小規模事業者持続化補助金(小規模事業者補助金)
  2. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
  3. ホームページ制作のための補助金を用意している自治体一覧自治体の補助金

それぞれについて説明します。

小規模事業者補助金

小規模事業者補助金は、従業員20人以下の小規模事業者が、商工会・商工会議所の支援を受けて経営計画を作成し、販路開拓やITツールの導入などの経費の一部を支援するものです。

IT導入補助金と異なり、小規模企業の販路の新規開拓、事業承継に向けた取り組み、生産性向上に向けた取り組みを実施する事業者を重点的に支援する補助金です。

事業の選び方によってはITツールの導入にも活用できます。

そして、IT導入補助金と異なり、下限金額がないので、少額のITツール導入やホームページ制作については小規模事業者補助金を活用できる可能性があります。

小規模事業者持続化補助金については、以下の記事で詳しく説明しています。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、IT導入補助金と異なり、革新的サービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善を行うための補助金です。

ものづくり補助金も、事業の選び方によってはITツールの導入に活用できます。

IT導入補助金より上限金額が大きいので、大規模なITツール導入については、ものづくり補助金を活用できる可能性があります。

ものづくり補助金についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

ホームページ制作のための補助金を用意している自治体一覧

中小企業や個人事業主のために、ホームページ作成に使える自治体独自の補助金がいくつかあります。

IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金と比べると補助金額は下がりますが、事業場所の自治体に問い合わせてみましょう。

ホームページ制作のための補助金がある自治体例

自治体 補助金名 対象者 補助対象経費 補助金額 申請期間
東京都中央区 ホームページ作成費補助金 中央区内の

  • 中小企業
  • 中小企業・個人事業主として創業予定の方
新規制作費・現存のホームページの変更費用ほか
  • 【一般】総額の1/2以内(上限5万円)
  • 【創業予定】総額の3/2以内(上限6万円)
5月・7月・9月(創業予定は5月のみ)※予定件数あり
東京都港区 ホームページ作成費用補助 港区内の中小企業、および商工団体など 新規制作費 対象経費の1/2以内(中小企業:上限10万円、商工団体等:上限50万円) ホームページ制作前
募集枠上限あり
東京都江東区 ホームページ作成費補助 江東区内の中小企業 制作委託費・ソフト購入代・ドメイン取得費用・サーバー利用初期費用 中小企業:対象経費の1/2以内(上限5万円)
江東区中小企業団体名簿に登録されている団体:(上限30万円)
ホームページ開設前
東京都豊島区 ホームページ作成支援 豊島区内の中小企業・創業予定者 新規開設費 対象経費の1/2以内(上限5万円) 例年2月末まで
東京都練馬区 ホームページ作成費補助金 練馬区内のホームページ未開設の中小企業、および税法上の収益事業を営む個人・団体など ホームページ開設にあたっての必要経費(物品購入費・通信回線費などは除く) 対象経費の1/2以内(上限4万円) ホームページ制作前
募集枠上限あり
大阪府吹田市 中小企業ホームページ作成事業補助金 吹田市内に主となる事業所を有する中小企業 新規制作委託費 対象経費の1/2以内(上限5万円) 毎年年1回~2回実施
岡山県赤磐市 赤磐市中小企業等ホームページ作成支援事業補助金 赤磐市内の中小企業 新規制作費・現存するホームページの改修費 対象経費の1/2以内(上限5万円) 直接問合わせてください

まとめ

IT導入補助金の制度概要から、申請の際のポイントまですべて網羅して説明してきました。

2018年までと比較すると、補助金額の下限と上限両方が大幅にアップしたので、少し申請のハードルは上がりました。

それでも、長い目で見ると、IT導入補助金を利用して、会社のIT化を一気に推進することは会社の足腰を強くするのにたいへん効果的です。

まだIT導入が遅れている中小企業の経営者であれば必ずおさえておきたい補助金です。

毎年少しずつ制度はアップデートされますが、いまのところ制度がなくなることはなさそうですのでこの機会にぜひ一度検討してみてください。

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